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インドマーケットの全体感と2015年のスタートアップ・VCトレンド。

はじめまして。インドリサーチを担当している河野です。

今回は初回ということで、インドマーケットの概観と2015年のスタートアップ投資トレンドについて簡単にまとめたいと思います。

■市場概要

【人口編】

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(出典:http://www.english-online.at/geography/india/india-population-problems.htm

インドの人口は2016年2月5日時点で約13億2000万人と言われている。現在人口世界一の中国は同日時点で約13億8000万人のため、6000万人の差となっている。

2014年の人口増加率はインドが約1.2%、中国が約0.5%であり、国連が昨年発表したレポートによると、インドの人口は2022年までに中国を抜き世界一となると予測されている。その後も増加を続け2070年前後の約17億5000万人まで増加を続けると見込まれる。

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(出典:https://populationpyramid.net/india/2016/ )

こちらは2016年のインドと中国の人口ピラミッドと人口規模の予測だ。現在インドは平均年齢26.9歳、一方の中国は37.3歳であり、インドは若年人口の比率が高く、今後もしばらく人口ボーナス期間が続くと思われる。

【経済編】

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(出典:ソフトバンク株式会社 2015年3月期 第2四半期決算説明会資料より)

こちらはソフトバンクの2015年3月期 第2四半期決算説明会で利用された資料の1枚だ。

インドは2050年頃には中国と並び世界の二大経済圏となると言われている。

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実際に2015年には中国の経済成長率6.9%に対して、インドは7.3%となり、初めて中国を上回った。さらに世界銀行は中国の経済成長の鈍化に対して、インドの経済成長率は2016年7.8%、2017年7.9%へと上昇する予測を発表している。

インドの経済成長率を支えるのは中間所得層の増加だ。インドの平均賃金は$295(約3万500円)と世界平均の$1480(約17万3000円)を大きく下回る。しかし、賃金上昇率はインフレの影響もあるものの、2014、15年ともに10%前後の成長を見せた。

今後インドの経済成長がさらに加速させるために必要とされるのが、雇用の創出と教育の整備である。インドの識字率は74%と言われているが、この数字は名前を言える書ける程度も含まれている。実際に義務教育の修了者は50%に満たない。さらにヒンディー語と英語が公用語とされるインドだが、英語話者比率は人口の約10%であり都市部に住む教育を受けたインド人に限定されている。

【インターネット編】

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出典:http://www.slideshare.net/wearesocialsg/digital-in-2016/

インドのインターネット普及率は28%で約3億7500万人がアクセス可能である。インターネット普及率は2017年までに5億人を突破すると見られている。さらに、モバイルインターネット普及率は約3億人であり、Webトラフィックの65%はモバイル経由となっている。

インドのモバイルインターネットはSIMカードに通信データ量をチャージする従量課金制である。そのため、モバイルブラウザのシェアNo.1のUC Browserのように通信データ量の少ないアプリが好まれる。

特に郊外や地方では、モバイルインターネットもまだ2Gがメインという状況だ。しかし、2015年に複数の通信会社各社が4Gの提供を開始しており、高速化が進みつつある。

■2009-2015年の投資総額推移

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(出典:DazeInfo http://dazeinfo.com/2014/11/21/vc-investment-india-2009-2014-softbank-flipkart-startup-growth/

インドへのVC投資は2009~2013まで$1~2B(約1200~2400億円)を前後してきた。しかし、2014年にUS系VCやSoftBankなどの本格参入などにより、$3.86B(約4000億円)まで増加する。そして、2015年のインドへのVC投資は$9B(約1兆800億円)となり、VC投資総額ランキングではアメリカの$58.8B(約7兆円)、中国の$36B(約4兆3000億円)に続いて、世界第3位となった。

2015年前半はスタートアップバブルと言われるほどVC投資が急激に増加したため、シードステージにおいてはIITやIIMのようなトップスクール出身者でプロダクトがあれば、誰でも資金調達できると言われるほど調達環境は緩くなった。しかし2015年後半では、その弊害として実状に見合わないバリュエーションの高騰と特定のマーケット(デリバリーなど)への過剰投資が問題となり、次のラウンドの資金調達ができずにサービス停止や従業員解雇に追い込まれるスタートアップが多く見られた。

2016年はスタートアップにとって冬の年となるのではないかと世界的に予想されているが、インドにおいてもバリュエーションの低下や投資対象の絞り込みが起こり、投資環境は厳格化(適正化)に進むだろう。しかし、インドは世界的なVC投資冷え込みの影響が少ないと言われており、合計投資件数自体は増加するとの意見が多い。

■2015年インド投資トレンド

【投資家編】

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(出典:YourStory http://yourstory.com/2016/01/top-investors-of-indian-startups-2015/

投資件数ランキング1~4位までをUS系のVCが占める結果となった。海外系VCはレイターステージ、インド系VCはアーリーステージに投資が多い傾向がある。また、インドで活動するVCの数は2014年の250社前後から2015年は490社まで増加したと言われる。

このランキングには登場していないが、Tiger Globalと並んでインドスタートアップにとって重要度の高い投資家として、ソフトバンクと中国系投資家(アリババ、テンセント)の名前がよくあがるようになりつつある。彼らによる大規模投資は特定のマーケットの勝者を決定するほどの力を持ち、ソフトバンク、中国系投資家ともにインドへの投資をさらに増加させていくと見られている。

■2015年スタートアップトレンド

1.オンデマンドサービス

タクシー配車アプリのUberやOla Cabに代表されるオンデマンドサービスは大きな関心を集めた。人々はタクシー配車アプリでオンデマンドサービスの便利さを知り、Uber for ○○のようなサービスは複数のマーケットで生まれている。

2015年にインドスタートアップ界隈で「ハイパーローカルデリバリー」という言葉が話題となった。ハイパーローカルデリバリーとは、特定地域のレストランの料理や食料雑貨品、医薬品などを90分前後の短時間で配送するというものである。110社以上のスタートアップが参入し、$300M以上の投資が行われている。Flipkart、Amazon、Ola Cab、Zomatoなどのビッグプレイヤーも参入し、過剰競争となり多くのスタートアップが倒産や従業員解雇をした。

2.アプリECの発展

2015年にFlipkart傘下のMyntraがアプリオンリー戦略をとり、Webサイトを閉鎖した。Flipkartもそれに続くと見られていたが、ユーザーの反対などもあり断念した。それでもFlipkartのモバイルからのトラフィックは全体の75%であり、AmazonやSnapdeal以上である。2016年1月にFlipkartのCEOから会長となったSachin Bansalはモバイルからのトラフィックを90%、そしてその内の90%をアプリ経由にしたいと話している。

彼らがアプリ比率を高めたい理由は別記事に譲る。

3.オンライン上のインド現地語普及

インドマーケット概要でインドの英語話者比率は約10%だと述べたが、これまでのインドのインターネットユーザーはこの10%の層にほぼ合致していた。しかし、モバイルインターネットの普及により多くの非英語話者がオンラインとなりつつある。これらに対応するため、ECサイトやメディアがヒンディー語をはじめとするインド現地語対応を開始している。インド現地語対応の必要性はさらに高まるだろう。

■まとめ

2015年に安倍首相のインド訪問やインドへの新幹線導入などもあり、日本のメディアでもインドについて取り上げられることが少しずつ増えてきています。

インドは今後さらに成長を遂げ、消費マーケットとしてもちろん、世界展開するサービスを生み出すことにも大きな期待がかかっています。

今回はインドマーケットの全体感と2015年のスタートアップ・VCトレンドについてまとめましたが、今後はジャンルを絞ってインドスタートアップに関する詳しい記事を投稿していく中で、インドに興味を持って頂ける人が増えると嬉しいです。

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この記事の著者

河野 優人
株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ
インド リサーチャー

早稲田大学在学時に1年間、休学しインドにてインターンシップおよび事業立ち上げを経験。
現在はインド最大手であるテックメディア「Your Story」の日本語版の立ち上げにも従事。
2015年10月よりサイバーエージェント・ベンチャーズにてインド リサーチャーとして参加。