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巨大な韓国ローカルレストラン市場、5つの有望分野

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韓国のローカルレストランの市場は非常に大きい。1千万人近い人口が24時間眠らないソウルでは、韓国のレストラン数は50万店以上、市場規模は55〜60兆ウォン(約5.5兆~6兆円)と言われており、この分野のIT化はベンチャー企業にとって大きなチャンスがあるだろう。

■巨大なフードデリバリー市場とベンチャー企業のCM攻勢

スタートアップが飲食業界で最も技術革新をリードしてきた分野は、フードデリバリー市場である。韓国のデリバリー市場は米国とEUの次に大きく、約12兆ウォン(1.2兆円)であると言われている。このようなマーケットに、スマートフォンが登場したことによって位置情報ベースの検索が可能になった。ローカルレストランは周りの人に自分の店舗情報を配信することが可能になり、国内のスタートアップは地域のチラシやイエローページをスマートフォンの画面に置き換えるイノベーションを 起こした。一般的に韓国でチラシを撒くための費用は1店舗一月あたり数十万ウォン(数万円)だとされているが、費用対効果の面で見送る店舗が多かった。スマートフォンの場合は月5〜10万ウォンで購入することができ、充分な広告効果をもたらしてくれている。事業主の立場からみれば、効果的なマーケティングチャンネルが目の前に登場したというわけだ。

更に、購入→決済というワンストップサービスを導入することで、消費者の立場では、はるかに楽な配達注文が可能となった。食事をするという日々行われる意思決定を行う上 で、自然にスマートフォンを活用する頻度が高まっている。他方、事業主の立場では、手数料を支払うことで「周辺に居る多数の潜在顧客」に効果的にアクセスすることができるチャンネルが産まれた。それにより、効率の良い事業運営ができるようになったと言える。k_image02.jpg

最近のTVの広告を積極的に展開している「Woowa Brothers」

韓国では、Woowa BrothersYogiyoが急速に成長しており、最近のソーシャルコマース系企業のTicket Monsterもこの市場に参入した。Woowa BrothersとYogiyoはそれぞれ1,000万ドル(約10億円)以上の資金調達を完了し、TVCMに積極的に投資することで市場を成長させている(CAVは2014年3月にWooya Brothers社に出資している)。一方で、配達注文の際にスマートフォンを活用する割合はまだ15%程度だといわれており、今後さらに伸びていくだろう。

■今後立ち上がりが予想される、4つの有望事業分野

それではデリバリ-市場ではなく、一般的なローカルレストランの場合はどのような技術革新が行われているのだろうか。一つは、他の国とは異なって韓国市場でこの分野の絶対強者がまだいない状態である。これは、検索市場を支配しているNaverが 提供しているブログサービスが、ローカルレストランの情報チャンネルの大部分をカバーしているからである。しかし、ブログ検索の信頼性にはまだまだ問題が多いと考えている。レストランオーナーのマーケティングニーズ増加などの背景もあり、消費者の立場でも、オーナーの立場でも新たなチャネルの登場を期待している。この分野での新たな試みは、次の4つに分類できる。

1. 位置情報を活用した、顧客と店舗をつなげるO2Oサービス

想像してみてほしい。仮に私がレストランのマスターであり、レストラン周辺の空腹の人々に店舗のことを知らせ、訪問したら割引クーポンを提供するというこ とができるとすると、非常に強力なマーケティングが行えるのであろう(しかし、まだ技術的にスマートフォンが空腹の判断はできないのだが)。最も近くにいる人にマーケティングすることが最も効果的である、という点がこのアプローチの核心である。

この方法は、大手企業とスタートアップが同時に導入している。SK TelecomとGoogleは、近くのレストランの情報を端末から検索できるような機能を追加した。連絡先の検索のような簡単な操作で、近くのレストランの情報が獲得できる。SK Telecomは、子会社であるSK Planet事業と連動して決済まで繋げることができる方法を模索するようだ。周辺のレストラン情報と一緒に割引クーポン等をつけることが出来れば、マーケティングチャンネルとしてかなりの効果を持っていると思うことができる。

国内のSeeonやFoursquareは、消費者が直接チェックインする方式で位置情報を把握した後、周辺情報をリンクする方法でアプローチしている。更にはチェックイン自体の数を増加させるためにSNSをうまく活用しているようだ。

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周辺グルメ情報をリンクするナビゲーションアプリ「ギムギサ」

それだけでなく、Navigation Startupもこの分野に参入している。ギムギサというスマートフォンのナビゲーションサービスをするLocNallは、特定の目的地に移動している人々を把握し、その目的地周辺のグルメ情報を配信する方式で市場を開拓している(CAVは2013年10月にWooya Brothers社に出資している)。

位置情報を活用する場合、「消費者の正確な位置を把握すること」が最も重要になってくる。正確な位置を把握することができるというのは、広告主の立場から すると、「実際に来訪する可能性が高い人々に」、「効果的な広告の発信が可能であり」、「その状態が当分維持される」ということを意味する。GPSナビゲーションを使えれば、少なくとも移動経路や目的地にいるユーザを自然に、かつ正確に把握できるので、O2O(Online to Offline)プラットフォームに移行することが出来ると考えている。

しかし、このアプローチにおいて、提供する情報が有益でないといけないという問題を解決しなければならない。無分別なクーポンの提供やチラシ配布のような広告は、すぐにユーザの離脱を生じさせるからだ。ユーザの好みや実際訪問した店舗の特徴を位置情報と組み合わせて、可能な限りユーザの必要な情報を発信することが勝負のカギになると考えられる。

2. SNS を通じたレストランキュレーション

国内にレストランメディアの強者がない大きな理由の一つが、信頼できる情報を着実に提供するプレイヤーがいなかったからである(食べログやYelpは韓国市場には存在していない)。これを解決する方法の一つは、ソーシャルネットワーキングを活用する方式である。考えてみてほしい。たくさんのフォロワーを持っているTwitterインフルエンサーはその一言一句に大きな影響力を持っている。

同様に多くの人々と関係を結んでいる数多いグルメ好きが通い、最終的におすすめしてくれるレストランであれば、まず間違いなく美味しいと思うのではないだろうか。SNSを通じたレストランキュレーションとは、このような関係に基づいて「信頼性」のある情報をキュレーションしていく方式である。

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韓国のスタートアップのMango plateと いうスタートアップが、この方法で市場に参入している。本サービスは、レストランへの訪問者数やフォロー数、フォロワー数などをもとに、ある種の影響力スコアを作成して影響力のスコアが高いレストラン順位が高くなる方式である。また、自分がフォローしている人々が推奨しているレストランのなかで、訪れてみたい所を見つけることができる。「私たち同士が"良い"と思うレストランは、他人からも"良い"のでは」となるわけだ。

SNSを介して情報をキュレーションする場合、重要なポイントがある。最初の段階で、どのように知人とのつながりを作り出すか、というポイントである。いくらネッ トワークに情報がアップロードされても、その中でどれだけ影響力がある人が発信をしていたとしても、全く知らない人であれば私にはその意味が半減する。 我々は、まず始めに「私の友人は主にどこのレストランをおすすめしているか」という疑問を抱く。

次に、情報の信憑性の問題だ。実際行ってみた人々の正直な感想をどれだけ確保できるか。アップロードされた情報の大半が、実際に足を運ばないで作成した 「噂」である場合、情報としての信頼性は落ちるのは当たり前だ。また、推薦されるグルメ情報が限られた有名な幾つかの店舗だけに偏るのであれば、それもレストランのメディアとしての魅力が低下させる要素となる。この情報の信頼性と豊富さのバランス調整は、高難易度のオペレーションを要求されるであろう。

3. ビッグデータを活用したレストランキュレーション

韓国の多くのレストランの情報は、Web上 にブログの形で残っている。国内ポータルを介して取得することができるグルメブログの情報だけでも、国内のほとんどのレストラン情報を確保することができると言われている。ただし問題は、これらの情報は断片的であるため、ユーザの総合的な意思決定に活用することは容易ではない(「いくつかのブログを比較する」という行動をとるくらい)。

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ビッグデータを活用したグルメの紹介サービス「ダイニングコード」

韓国のDiningCodeは、Web上のさまざまな情報をデータ処理技術を活用することで、利用可能な情報にしてくれるサービスを提供している。様々なブログ上の定性的/定量的データを総合して、利用者が検索するキーワードを中心に優先順位を示すサービスである。

このサービスの最大の利点は、顧客の多様なニーズに応じて情報をキュレートすることができる点である。例えば、単純に「ソウル グルメ」のランキングだけでなく、「ソウルの駐車ができる韓国料理店」レベルの検索にも対応できる。ウェブ上にあまりにも膨大なデータが存在するため、これを活用して、「洗練された知識」に再整理する方法である。実際使ってみると、いろいろな角度からのソリューションを得ることができる。

ビッグデータの分析を通じてレストランをおすすめするというのは新しい試みだが、同様にいくつかの要件が必要になると予想される。分析の結果に最も影響を 与えるであろう、上位ブログの公平性を確保することができるかどうかという問題である。韓国の場合、マーケティング目的でブログ記事に見立てた広告コンテ ンツを作成する場合が少なくない。このような情報が分析に大きな影響を及ぼさないように自浄能力を備えることができるかが重要である。

また、情報の偏り現象をどのように処理するかも重要である。ウェブ上のデータを処理する場合、人々の口コミが多く集まる上位の店舗情報の比重が高くなるはずだ。しかし、ヒット数は多少少なくても 他のブログの中にも高い評価をもらう店舗は存在するはずである。このようなお店の情報も上位にランクすることができればこそ、飲食メディアになり得る。(アクセスするたびに同じレストランの情報しか獲得できないと、使用動機も弱まるだろう)。特に、ビジネスモデルを検討する場合は、この市場は典型的なロ ングテールのビジネスであるため、様々な情報が一定の方式に基づいて消費者に露出されていることが非常に重要であると考えられる。

4. 顧客サービスの拡張

このアプローチは、米国のOpenTableと類似している方法である。考えてみよう。デート中に突然イタリアンを要求する恋人、その場で立派なレストラン予約。5分も歩かないでお店に着くと既にセッティング完了。座って楽しむだけ。恋人からはかなりの評価をもらえるのではないか。

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プレミアムレストラン予約サービス「poing」

poingは、レストランの検索から予約までをわずか数回のタッチで解決してくれるサービスである。予約が可能なレストランの相当な割合をカバーしており、独自の自動ARS技術を使って店舗と通話をせずに予約ができてしまう。また、訪問した後にはレビューを書くように誘導しているので、実際の経験に基づいた質の高いレビューを蓄積している。

このサービスの場合、「予約に値するレストラン」がターゲットユーザーと合致している、という点が重要である。つまり、ある程度の顧客単価があるレストラ ン向きのメディアである。一般的な店のためのメディアよりはバーチカルキュレーションメディアの性格が強いため、ターゲットユーザー層に絞る必要がある。 自然にビジネスを展開する過程で収益性の高いビジネスモデルを選択するか、あるいは自然なカテゴリ拡張を通じた量的成長戦略など、変化のための高度な戦略が必要である。

個人的には、このサービスは「決済」機能が追加されると予想している。すべてのレストランに適用することはできないのであろうが、規格化されたメニューが中心である場合、そして、特定の時間帯にお客様が集まるレストランなどを中心に事前予約~購入~決済がワンストップに行われ、Uberのような経験を与えてくれる方向に発展することを期待する(既にデリバリー市場での変化はこういう方向性を持っている)。

以上、極めて個人的な観点から整理してみたが、ローカルレストラン市場においては様々な試みがなされていると感じている。どのような方法であっても共通する最も重要なポイントは、継続的に信頼性の高い情報を維持するとともに、広告主の立場から消費者に有益な情報を届けていく、という点である。この二つを適切なバランスを持って運営をしていくのは難しく、また、最近ではLINEやKakaoなどのメッセンジャープレーヤーも市場に参入していることから非常に難易度の高い市場であるが、非常に注目度の高い市場である。

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この記事の著者

ユ ジョンホ
株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ
インベストメント・マネージャー

成均館大学、及び同大学院で経営学を専攻した後、ミシガン大学 ロススクールでグローバルMBAエクスチェンジコースを修了。外資系コンサルティング会社にて、グローバル企業の成長戦略、M&Aプランニングや各種ビジネスDDなど、20以上のコンサルティングプロジェクトに従事した後、2013年1月よりサイバーエージェント・ベンチャーズに入社し、韓国企業への投資活動及び経営支援業務に従事。