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Smart Lighting Marketの今後の行方

IoTという言葉は2005年頃に生まれ、特に製造に関する周辺環境、技術の向上にインターネットが加わる事で徐々にアイデアが具現化されてきた。そして昨年のCESで大々的に各社の取組みが発表され、2015年はIoT元年とも言うべき年となった。今回はIoTの中でも我々が特に注目しているSmart Lighting Marketについて紹介したい。内容は以前Slideshareで投稿したSmart Lighting Market Research Report を元にしているので興味がある方は是非そちらもご参照願いたい。

Smart Lightingとは?

Smart Lightingとはネットに繋がることでインテリジェンスが追加されたライトのこと。つまりセンサーを通して行動パターンを認識し、クラウドで機械学習することで最適なライティングを実現し、消費電力を減らし更なる利便性を追求することができる次世代の電球である。

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なぜSmart Lightingが注目されているのか?

全世界の消費電力のうち、1/5は照明によって消費されていると言われており、全世界の商業施設及び住宅エネルギーコストのうち40%を電気が占め、消費電力の削減が個人レベルから企業・政府にとっての大きな課題とされている。その中で、LED照明は高い省電力性と低い製造コストにより、今後消費電力削減の鍵とされている。またSmart Lightingと呼ばれるセンサーとネットと連携したライトの出現により、さらなる消費電力削減が可能となり、大きな成長市場として見込まれていることが背景にある。

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(出典:US. Energy Information Administration)

グローバルにおける市場規模と今後の成長率

グローバルで2014年よりCAGR22%で成長し2020年にはSmart Lighting Market全体の市場規模は$8.14Billion に達する見込みである。

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(出典: "Market Research Reports": Smart Lighting Market is Expected to Reach USD8.14 Billion in 2020.)

成長を牽引するキーファクター

この市場の成長におけるキーファクターは3つあり、

(1)顧客セグメント

(2)ライトの種類

(3)Connectivity Technology

である。以下それぞれを順に見て行きたい。

顧客セグメント

大きく4つに分類される。政府・市などのガバメント分野、住宅などのレジデンシャル分野、小売店やオフィスなどのコマーシャル分野、工場などのインダストリアル分野である。

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(出典:Slideshare "Smart Lighting Market Research Report")

ライトの種類

ライトの種類は大きく4種類に分かれる。現時点では蛍光灯(Compact Fluorescent Lighting) が最大のシェアを持つ。

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しかし、2020年までにはLED Lightingが最も高い成長率(CAGR17.2%)で成長し、市場規模$22Billionまで到達すると見込まれている。

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(出典:LEDinside)

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LED Lightingの主な成長要因として、ノーベル賞受賞者の中村修二氏の青色LEDにおける発明による白色のLEDライトの製造が可能となった事、また技術革新による製造コストの低下、全世界における電力消費やCO2削減に向けての省エネニーズの高まりなどの市場要因などがあげられる。

LED lighting "Smart"

成長著しいLED Lightingの多くが2020年までにコネクティビティを持った"Smart"なライトになると予測される。ライト製造会社大手のPhilips によるとLED Lightingを"Smart"化することで、現状の蛍光灯や白熱灯よりも最大80%の節電が可能と測定し、多くの注目が集まる。

Smart Homeへの技術的素地

HEMSやDLNA等のホームネットワーキングへの標準化が進み、Smart Homeへの技術的素地が出来上がってきた。Smart Lighting もその流れの1つとなる。

Connectivity Technology

LightingのConnectivity を可能とする技術について以下の表にまとめた。

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まず大きく分けてWired(有線)、Wireless(無線)と分類されるが、2014年時点では、その通信の安定性・信頼性からWired connection(有線接続)が多く利用されていた。

しかし近年セットアップが容易になり、導入コストも低く、通信の安定性が向上したことにより、Wireless connection(無線接続)は2020年までに毎年31%の高い成長率で伸び市場の大部分を取ると予測される。

Wireless Connectivity

大きな成長が見込まれるwireless connectivityだが、Smart Lightingを含め、多くの家電向けに利用される無線通信規格だけでも多くの規格が林立しており、現時点でデファクトとなった規格は存在していない。

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それぞれのスペックを比較すると下記のようになる。

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主要メーカーが実際にどんなconnectivity を使用しているのかを一覧でまとめると以下のようになる。

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ホームゲートウェイの覇権争い

connectivity をめぐる闘いは、Smart Homeでのハブとなる存在であるホームゲートウェイを巡る覇権争いと大きく関わりがある。ホームゲートウェイの覇権争いを下記の表にまとめてみた。

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ライト製造会社大手はConnectivity にZigBeeやZ-waveを使用することで家電とインターネットを接続するにあたり、ゲートウェイを必要とすることで最終的にはホームゲートウェイを取ることを狙っている。つまり家の中の家電を自社製品で埋め尽くす囲い込み戦略を取っている。

それに対してコンシューマーエレクトロニクス大手のappleやネット企業大手アマゾンなどはAppleTV、 Amazon Echoなどを持ってホームゲートウェイ獲得に参入した。家での行動データを元にアマゾンへの購入を促したり、iTunesでコンテンツを販売したり、既存のネットサービスへの導線としている。ライト製造会社には取ることができないネット企業ならではの戦略である。

世の中の新しい動き

製造会社大手やネット企業大手を中心とするホームゲートウェイによるアプローチ(Centralized)に対抗する世の中の新しい動きが出てきている。それは ホームゲートウェイを必要としない、スマホを中心としたアプローチ(Decentralized) である。

スマホを中心としたアプローチにおいては、BluetoothによるMesh Networkなどの新しい通信技術により、IoT機器同士またはスマホとダイレクトに接続が可能となり、ゲートウェイを必要としないインターネットの接続が実現できるようになった。

Bluetooth Smart Mesh Network Bluetooth Smart

そもそもBluetoothとは古くから普及した通信技術であり、ほぼ全てのスマートフォン、携帯電話をはじめ、ワイヤレスキーボードから車に至まで多くの機器に採用されている。現在のBluetoothは接続範囲が狭く、同時接続デバイス数も少ないなどの欠点があった。しかしBluetooth Smartの登場によりこれまでの欠点が大幅に改善された。具体的にはMesh Networkにより接続範囲も100ftから300ft(100m)まで拡大し、同時接続可能なデバイス数も大幅に増加した。

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同じMesh Networkで、スマホにダイレクトに接続が可能なWifiと比較すると、Bluetoothは消費電力が極めて高く、消費電力削減向けたSmart Lighting市場においてはBluetooth Smartの方が理にかなっていると考える。

Smart Lighting Marketの勝ちパターン

1つは、日々ユーザーと接点を持つ企業:Google/ Appleなどデバイス・アプリ・クラウドサービスなどを垂直統合しHardware as a Service (HaaS)として提供できるネット企業や、SORAAのような新興企業で自前で全て提供しようとする会社。

SORAA:ノーベル賞受賞者である中村修二氏によるLED Lighting のスタートアップ。

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2つ目は、Enabler提供企業:HaaS実現に向けたenabling technology / プラットフォームの提供会社。その一例にSilvairがあげられる。Silvair はライト製造会社向けにBluetoothモジュールとアプリ・SDKを提供するスタートアップであり、弊社の支援先でもある。

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HaaS時代の製造会社の生存戦略

IoTの本質はネットに繋がったデバイスを通じデータを集積し、そのデータを解析することで、ユーザーに対し新たな価値を提供する事である。HaaSとしてサービス・プラットフォームがその主戦場になるわけだが、ライト製造会社が単なる下請け企業になるのではなく、生き残っていくために次のような生存戦略が考えられる。

(1)垂直統合モデルへの転換:機器販売、アプリ提供、クラウド提供と一気通貫で提供する。大手メーカーであればソフトウェア会社を買収することで、総合的なサービスが提供可能となる。(GEなど)

(2)協業モデル:特定領域で強みを持つ者同士が複数社協業することで、よりユーザーにとって利便性の高い総合的なサービスを提供するモデル。(例:LED製造会社のSORAA、Enabler提供企業のSilvair、家電販売に強いソフトウェア企業の協業など)

まとめ

先に述べたように、Smart Lighting 市場は技術革新や市場ニーズの高まりによって、今後大きく成長が期待される分野である。またSmart LightingのConnectivity を巡る戦いは、実はSmart Homeにおいて家庭内に設置したデバイスの集約とネット接続を行うゲートウェイを狙う製造会社大手とネット企業の戦いでもあった。そしてBluetooth Smartなどによる新しい通信技術の登場により、ゲートウェイを必要としない、スマホを中心としたアプローチは同市場においてゲームチェンジャーとなる可能性を秘めている。Smart Home市場を含め、今後も注視して行きたい。

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この記事の著者

田中 優祐
CyberAgent Ventures,Inc
米国オフィス リサーチャー

神戸大学経営学部在学中に、米国ワシントン大学への交換留学を経験。帰国後2014年8月より株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズにアソシエイトインターンとしてジョイン。シード特化の投資チーム「Seed Generator Fund」の立ち上げに参画。2015年3月の大学卒業直前に米国移住&起業を決意。2015年11月よりサイバーエージェント・ベンチャーズ米国オフィスにリサチャーとしてジョイン。神戸大学経営学部卒。

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